ヨイトマケの唄と人権擁護法案。

 最後にひととき月曜日。噂のクローズアップ現代で若手作家特集が取りざたされていて、『失われた90年代』が彼らの作品の共通点としてあるのではないかみたいなことを話していました。うーん、それはどうなのかなぁ(ツッコミ多数?)。僕なんかはそういうことをあまり意識しているつもりはないんだけど。ニヒリストちっくになってしまっている部分はあるかな。で、肝心の内容なのですが、高橋源一郎さんが文芸ビッグバンの幕開けではないか、という話をしているのですが、確かに文字情報に触れる機会は結構増えていますね。今の若者のなりたい職業の一つに作家というものがあるらしいですし、すると日本全国の作家の卵を集めたら大変なことになりますね(笑)。ここから先どうなるのかな。面白くもあり。心配でもあり。


 僕は最近、月曜日は美輪明宏さんの『NHK人間講座というのを見ています。その中で今日はヨイトマケの唄というのをとりあげられておりました。『ヨイトマケの唄』にはピンと来なくても『♪母ちゃんのため~な~らエ~ンヤコ~ラ』というフレーズには聞き覚えがあることでしょう。このフレーズに始まる唄なのですが、これは美輪さん自身が作詞・作曲したとのこと。シンガーソングライターが少ない時代において、このような現実を優しいまなざしで見つめた唄を自分で作って歌っていたというのは素晴らしいことだと思います。そして、この唄自体は唄を歌いながら働く母親とその子どもの母子愛のお話でもあるわけです。最初のフレーズで吹き出した人も、唄の終わり頃には涙を流しているとか。感動した人が全国にいて、感謝の言葉も沢山受けたそうです。実際歌詞をじっくり噛みしめると本当にいい唄なんですよね。歌詞が全文掲載されているサイトさんを見つけましたので、JASRACはあまりうるさく言わないでくれるといいなぁ、と思います。


 さて、ここには実に興味深い事実があります。なんでも、部落解放同盟だかなんだかが『差別だ』と訴えて放送禁止歌にしてしまったというあまりにもトンチキな話がありました。もちろん美輪さんは働いているヨイトマケの人たちをバカにしたつもりは全くなく、むしろ彼らを誇りにし、そこに隠されている無償の愛を高らかに歌い上げたわけです。なのに、『ヨイトマケの子どもだとしていじめにあった』という描写から『差別だ』とレッテルを貼り、民放全てでこの唄は封印されてしまったのです*1


 そういえば、今国会では人権擁護法案というのが審議されています。……ところで、これ皆さん聞き覚えはないでしょうか? かつてメディア規制3法案と呼ばれていた法案があって、その中の一つとして数えられていたものです*2。しかし、『マスコミが取材する場合』においてはこの法規制は凍結されるとか。それでマスコミはこの問題を大きく取り上げないのではないか、という憶測もあります。そして、これからそのメディア規制の矛先がインターネットに向くのではないか、という話もあったりして。確かに、立場的に弱い人を守るというのは差別撤廃の本則でしょう。しかし、何を持って差別ではないとするのか、基本的人権が生まれながらにして与えられた権利だと定義づけるのであれば、何故人権委員会等を設置する必要があるのか(法務省の人権専門部署で何故十分ではないのか?)。もちろん誹謗中傷はいけないことでしょうけれど、ネット発のジャーナリズムという点において以前の『メディア規制法案』で懸念されたことが出てこないか? と問題は山積みなのであります。こんなブログもありますけれど、誰も最初から(在日コリアンとか創価学会とかに)差別意識をもって反対しているのではなく、むしろずっと懸念され続けてきた『人権保護』を笠に着た汚職・癒着の構造が解体されないことがそのまま闇に埋もれてしまう可能性があるのです。これが一番怖いことで、その先に『社会的弱者』というレッテルが違う方向で一人歩きしてしまう可能性もなきにしもあらずなのです。上記ブログより、在日コリアン辛淑玉さんのインタビューが掲載されています。

(引用者前略、太字も引用者)

 法務省外局に人権委員会(仮称)をつくる、もってのほかの法案だが、人権救済が明文化されれば民事訴訟などで武器になる。たたかれている者は「小さなニンジン」でもうれしいし、転ぶんです。だから、与党案にだって飛びつきたくなる。東京都の管理職受験資格が否定されたように、在日コリアンも一貫して無権利状態。われわれマイノリティーは今、なんの保護もない「奴隷」なんですよ。

   ――にもかかわらず、与党案に反対の理由は。

 自民党憲法すら解釈で骨抜きにしてきたから、今度も「人権」を盾に良識あるメディアの息の根が止められる。物言えぬ社会になるばかりか、戦争への道につながる、とんでもない悪法です。反対運動の仕切り直しが必要。たとえ負けても「これはまずいぞ」と思わせる負け方ができれば、政府・与党の暴走は防げる。同時に、人権カードを使い、味方のふりをしつつ自らの既得権だけ考える人や組織は…、私は絶対に許さない。

   ――在日外国人に指紋押なつを強制した人たちが、今度は辛さんたちの人権を守ります、と言っている。感想を。

 吐き気がします。悪夢ですよ。

 インタビュアーは共同通信の人かな? なんか共同通信イデオロギーが鼻についてぷんぷんしますけれど*3、『人権』を盾にさまざまなメディアがつぶれていく可能性もあるわけで。こういうところを堀江さんとかは訴えていくべきじゃないかな、と思います。


 いつの時代も難癖つける人は変なところに難癖つけるものだから、ちゃんと良識を持った人が『それはおかしい』と指摘していく必要があるよね、という話でした(本当かな)。

 そんなわけでThat's all.*4

*1:そういえば『燃えるお兄さん!』という漫画で『用務員を働くオッサン呼ばわりした』とかで大変な騒ぎになったことがあったとかなかったとか。もちろんアレはアレで背景はあるんでしょうけれど、そこだけ切り取ると……なんだかな、という気はしなくもないです(笑)。

*2「メディア規制」法案についてを参照のこと。確かこれが問題になった辺り、ズームインSUPERで辛抱さんがメディア規制法案があってもジャーナリズムは出来る、といっていましたが。考え方が読売的(保守中道?)であることは否めませんが、この人の新聞分析は的確なんですよね。朝日・毎日が左派勢力、読売・産経が右派勢力であることをしっかり図示出来る人はなかなかいないのでは。

*3:辛さんが述べる管理職受験資格問題についてはちょっと疑問符を付けざるを得ない。これは『人権』とは別の問題で、外国人に公務員としての資格や参政権を与えるべきか? という問題に変化してくる。もちろん参政権も人権の一つではあるけれども、では日本国籍を有しない人に日本国を運営する人を選ぶ権利を与えるべきなのか? という政治的な問題になる。もちろん、自民VS民主・社民・共産になるだろうから一概にすんなり解決しうるとは思えないけど。

*4:ひかりさん@ひかり小説館のマネ。