加藤元浩『Q.E.D.-証明終了-』20巻(講談社月刊少年マガジンコミックス)

4063709728Q.E.D.-証明終了- 20 (月刊マガジンコミックス)
加藤 元浩
講談社 2005-02-17

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今年17冊目(小説0、漫画17、その他0)。

数年前、燈馬が出会った医者志望の中国人、胡家輝。彼は数学者をロマンチストだと語った。……それから時間が経ち、「φの場所で待つ」との彼からのメールが届く。しかし、胡は既に死んだはずだった。それと同時に起こる連続殺人。それは被害者が加害者となり、加害者が被害者となる『循環殺人』だった……『φ』を巡る数学ミステリ『無限の月』。また、探偵同好会のクイーンの祖母を巻き込んだ騒動の正体を探る『多忙な江成さん』の2編を収録。


やっぱりここでは『無限の月』が秀逸。実際にトリックやロジックの面ではある一点に気づけばすぐに崩れるお話だけれど、この話の醍醐味は『φ』の一文字に尽きると思う。そういえばこれが発表された同時期に森博嗣氏の『Φは壊れたね』というタイトルの本が発売されて、なんだかすごく印象深かったのを覚えている。『φ』は自明であり、証明不要の原則みたいなもの。数学が集合によって語られる以上、『何もないことを示す集合』=『φ』の必然性が出てくる*1。それは果たしてロマンチシズムなのか。だとすると、ミステリと数学は似ている気がする。どちらも『謎』というロマンを追い求めるという意味では極めて感傷的であるからだ。では、『ロマンの先には何があるか』……それを追い求めてしまうのが科学者の性だろう。そして、その”先”を象徴している『月』は作品全体に何とも言えない光を与えている。『月』がロマンの象徴であればあるほど、彼らの目には大きく見えているのだろう。


一方、『多忙な江成さん』はコミカルなミステリ。ミステリと言うよりはドタバタ劇に近いのはご愛敬かな? 『謎編』『解決編』と分かれている以上、「これがあなたに解けますか?」とあたかも『Q.E.D.』宣言直前の燈馬くんの表情が物語っているように見える。大筋の所ではだいたい分かったんだがなぁ、動機が最後の一コマに全て現れているのもすごい。大変面白かったです。


そういえば気がつくとあれよあれよという間に20巻です。すごいなー。今後も楽しみ。

*1:よく分からない人は『ゼロ』の概念を考えてもられるといい。『何もないものを示す記号』という意味では同じに思うのだけど。