藤子・F・不二雄SF短篇集 1~4巻(中央公論新社中公文庫コミック版)
藤子・F・不二雄SF短篇集 (1) 創世日記 中公文庫―コミック版 藤子・F・不二雄 中央公論社 1994-09 by G-Tools |
今年29冊目(小説2、漫画27、その他0)。
藤子・F・不二雄が『ドラえもん』と同時期に描いていたSF=少し不思議な短篇集。基本的にオチがダークだったり、かなり毒を含んだ内容になったりしています。『ドラえもん』でもテーマ別の短篇集が出ていたりしますが、ではその『ドラえもん』という枠を外したら? というある意味ifの世界が展開されています。創世記ネタ・未来ネタという地学ネタが多いのはF氏のお得意技なのかな、と思います。
自身におけるSFを『少し不思議』と定義したF氏。日常の中に唐突に持ち込まれる非日常の世界が日常の世界を変化させる、という感じで描かれています。『ドラえもん』『キテレツ』といったシリーズが子ども向けの、『日常生活にこんなのがあったらいいな』という感覚で描かれているのに対し、彼の描くSF短篇シリーズはある意味そのような夢をどこかで失ってしまった大人たちの日常生活に、半ば強引に『こんなのがあったらいいな』という存在を持ち込んでみせているわけです。多くの人にはそれは既に自分には不要な存在だったりするわけで、そこからいつの間にか狂気の世界に陥っていく……この辺、相方の藤子不二雄A氏の『ビジュアル的怖さ』とは異なる、心理的な怖さがありますね。結構一読しただけでは分からなかったりするのが多いので、再読して何とか書き足そうとは思います。
それにしても、このシリーズには『世にも奇妙な物語』のテーマ曲が似合いますね。読み終わったあと、自分の頭の中でエンドレスで流れています。以下、一言感想。
藤子・F・不二雄SF短篇集 (1) 創世日記 中公文庫―コミック版 藤子・F・不二雄 中央公論社 1994-09 by G-Tools |
- マイ・シェルター
- 核に関するifというのもこのような切り口からしてみるのもいいかも。
- 創世日記
- お得意の創世ネタ。後味さわやかなパターン。
- いけにえ
- ダジャレだけで一本作ってしまった気もなきにしもあらず。僕は結構好き。
- 街がいた!!
- 無生物に自我を持たせてみるという一本。
- 老年期の終り
- もう一度読んでみないと分からないなぁ。
- うちの石炭紀
- みんなが拒否反応を示すある生物に(以下略)。こんな『いつの間にやら』ネタは現実世界とのズレが反映されているようで結構好きですね。
- みどりの守り神
- 長編で読んでみたい作品。単行本化したら読み応えはありそうな。
藤子・F・不二雄SF短篇集 (2) メフィスト惨歌 中公文庫―コミック版 藤子・F・不二雄 中央公論社 1994-09 by G-Tools |
- メフィスト惨歌
- 死神ネタというのは結構あるんですけれど、これはそれを逆手に取ってみました、という作品ですね。この逆の視点が面白い。
- 倍速
- ……まさかF先生が(自主規制)ネタで落とすとは思いもしませんでした(笑)。
- マイホーム
- 過去移住するだけでタイムパラドックスが起きるんじゃ、という感覚は不毛か。
- 侵略者
- このままヤケになって暴動、というのでも良かったかも知れないけど、このオチの方が平和でいいか。
- マイロボット
- 中身としては結構オーソドックスだが、オチに思いをはせると怖くなる。
- テレパ椎
- ダジャレ×サトリの話。
- ユメカゲロウ
- 心温まるハートウォーミングなお話。これはSFというよりは……ファンタジーかな。
- 裏町裏通り名画館
- 略。
- 有名人販売株式会社
- これも再読しないと良さが分からないなぁ。
- 殺され屋
- 一発ネタ。しっかり騙されました。
藤子・F・不二雄SF短篇集 (3) 超兵器ガ壱号 中公文庫―コミック版 藤子・F・不二雄 中央公論社 1994-10 by G-Tools |
- 超兵器ガ壱號
- どうなるのかな、と最後までどきどきして読んだ作品。まさかあの時代とあの古典的名作をかけ合わせるとは……。
- 福来たる
- 早起きは『三文』の得とは今は昔。時代ごとの幸福感ってあるんですけれど。
- 神さまごっこ
- 創世もシムシティとおんなじで楽じゃありません。放っておくと……。
- 影男
- 要再読。
- 昨日のオレは今日の敵
- ……確か、ドラえもんの有名エピソードにおんなじのを見た覚えが。
- あいつのタイムマシン
- 再読したけど未だに分からないというか、感想が書きにくい……。
- 耳太郎
- サトリじゃなくて『テレパシー』と言うには何かこだわりがあるのかな?
- 宇宙人
- これって実在するんでしょうか?
藤子・F・不二雄SF短篇集 (4) ぼくは神様 中公文庫―コミック版 藤子・F・不二雄 中央公論社 1994-10 by G-Tools |
- ぼくは神様
- タイトルで創世ネタかと思いましたが……そうはいきませんよね。
- 征地球論
- F先生の社会批判がにじみ出ているというとそうかも知れず。
- 求む! 求める人
- 待てば海路の日和あり。僕も欲しい。
- 旅人還る
- 要再読。
- ぼくの悪行
- 並行世界物は解説が書きにくいです。
- 考える足
- 面白い。
- 白亜荘二泊三日
- ほのぼの。
- ベソとこたつと宇宙船
- うーん、もっと読み込まないと。
結果。かなり感想が書きにくい物ばっかりでした。何だろう。
ただ、感想とはまた別として読む価値があるのは事実。今度小学館版の全巻レビューを出来ればいいんですが(というより、あっちの方が僕は好きだ)。