松井優征『魔人探偵脳噛ネウロ』1巻(集英社ジャンプコミックス刊)

4088738349魔人探偵脳噛ネウロ (1) (ジャンプ・コミックス)
松井 優征
集英社 2005-07-04

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読了。今年34冊目(小説2、漫画32、その他0)。

女子高生・桂木弥子の父親が殺された。密室の惨殺事件。謎に満ちた事件は弥子の日常を混乱へ……。一向に捜査が進展しない中、悲しみにくれる弥子の前に脳噛ネウロと名乗る男が現れた。彼は言う。究極の『謎』を解き(くい)たいと……!!

 ドーピングコンソメスープの登場で変なものヲタクの心を鷲掴みにしたあの『ネウロ』がついに単行本になって登場ですよ! 表紙はもちろん逆さまのネウロ。しかし、Amazonの画像には帯がついていません。というわけで、帯を若干上にあげてください


 怖いですから(いろんな意味で)。


 そしてページをめくるたびに出てくる怖さと遊び心満載の仕掛け。一応探偵物と銘打ってはいますけれど、作者の言葉通り散りばめられた遊びにツッコミを入れるのがこの漫画の読み方。『探偵ギャグ』という面では昔にはあの大場つ……げふんげふん。ガモウひろしさんの『僕は少年探偵ダン♪』しかり、あさりよしとおさんも『少女探偵金田はじめの事件簿』という数々の漫画が生まれては消えていきましたが、どれも大ヒットには至りませんでした。探偵ギャグというジャンルにおいてここまで読者に愛される作品になったのは初めてではないでしょうか。


 そして幾多の『探偵ギャグ』と一線を画しているのが、魅力的な謎個性的な犯人描写。今回は『毒殺』『密室殺人』『アリバイトリック』とありまして、謎はどれも魅力的です。推理ものにとって伏線がしっかりと張ってあるというのは必須条件でありますが、だってコレ、『ギャグ漫画』ですから。伏線はこれでもかと言っていいほど張られません。申し訳程度にヒントがあるので、目を皿のようにすれば解けるかもしれませんが……そんなことが出来るのはネウロだけです。それでも解答編では一応の筋道が立っているのが(まぁ、伏線さえ張らなければ何でもあり、という意見もあるのですが)不思議なところ。『桂木家殺人事件』では全ての謎が解かれ終わったあとに第二話を見ると、しっかりヒントらしきものが描かれてます……んー、芸が細かい。この事件では『何故部屋は密室となったのか?』というホワイダニットが事件を解決する決め手となるので、まだ読んでない方はゆめゆめご油断なさらぬよう。


 そして、後者の犯人などは、『レストラン殺人』における至郎田シェフ*1あの姿*2はどう考えたってギャグにしか見えませんね。他の犯人もそれなりに人外な格好で出てくるのですが、この人には敵わないでしょう。そして、この人の登場が作品の方向性を決定的にしたとも言えます(笑)。「ありえねー」と叫びながら読んでいくのがいいかと思います。


 まぁ、結局の所キワモノ漫画ではあるのですが、僕みたいな小説を買うと始めに読者への挑戦状を探す奴にはうってつけかもしれませんね(笑)。あとは一度読み終えると再読以降はひたすら解答編だけ読むヤツとか(それもお前か)。いずれにせよ2005年のジャンプの中では注目作品の一つでありますので、探偵物のフォーマットに慣れた方にこそ読んで欲しい作品ですね……ガチガチの本格崇拝者にはお勧めしませんけれど。


 決めぜりふは「この『謎』ももはや我が輩の舌の上だ」。ああ、でもやっぱりネウロと同じく僕も謎の味を味わいたいわけですよ。んー、ネウロ本格ミステリって描いてくれないかなぁ……むしろ僕が勝手に小説を書けばいいのか。そうか、そうしよう。どきどきわくわく(いつも通りの舌先三寸)。

*1:この事件はほぼ倒叙モノみたいなものなので、犯人をズバリ書いちゃっても問題ないでしょう。

*2天原帝国さんのトップ画像を参照(笑)。夜中に爆笑しても僕は責任を持ちません。