よしながふみ『大奥』1巻(白泉社ジェッツコミックス)
大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301)) よしなが ふみ 白泉社 2005-09-29 by G-Tools |
読了。今年43冊(小説4、漫画39、その他0)。
とある村から起こった未曾有の大疫病は、日本の人口構造を大きく転換させた。年頃の男性が次々と死に絶えた結果、女性が働き手の主となるところとなり、その結果男女の役割を交換せざるを得なくなる。江戸幕府も三代将軍以降女系が相続するとなり、いわゆる大奥は女人禁制の城として、美男三千人を召し抱えることになる――近年大ブームの『大奥』モノを百八十度転換した、パラレル江戸時代の歴史大作、ここに開幕。……といっては見たモノの、スズキトモユさんが解説しちゃったのでかぶらないように紹介するの難しいよ! あやまれ!(誰に。)
『西洋骨董洋菓子店』が月9になったりして今や売れっ子作家となったよしながふみさんですが、耽美系作家の一翼を担うことでも知られています(中村春菊さんとかこうじま奈月さんとかのライン?)。のでいわゆる掛け算が大好きな婦女子の方々は楽しめること請け合いです……が、本筋はそこにあるのではなくて。
第一巻は彼女がいるにもかかわらず婿入りしたくないためだけに大奥に潜り込んだ水野を中心に、『男だらけの世界』を描いていきます。モーホーの気があったり、あるいは出世のために上司に取り入ったり(場合によってはそのままむにゃむにゃ)、と怪しい世界はあることにはあるのですが、何よりも男らしい水野のさわやかさが中和してくれますね。
そして七代将軍家継が逝去すると、紀伊からやってきた新将軍が幕政の大改革に取りかかる……この女性こそ、(史実では)後に享保の改革を行うことになる、八代将軍徳川吉宗である。
ちなみに将軍交代についてはほとんど史実通りだし、加納久通自身も実在の人物*1だったりして(吉宗登場後すぐ罷免された『間部』とはおそらく間部詮房のことだろう)、その辺は意外と史実に忠実だったりする。吉宗が水野の危機に下した判断はそのまま「姐さーん!」と叫びたくなるようなあっぱれな結果で、見事なハッピーエンドを見せてくれました。後味が凄くいい。この辺で、『素晴らしい!』としか言いようがないです。
で、第四話では吉宗はパラレル江戸時代における謎に挑んでいくことになります。それは……まぁ、読んでみてのお楽しみと言うことで。
個人的には提出されている謎以外にも色々あって、本来の『大奥』にある実母と正室の差が、母体が一つの場合区別がつきにくい……といった男女交代によるさまざまな変更と性差論への影響が見所かなぁ、と思います。漫画で哲学をテーマにするなら、ジェンダー論に関わってきそうです。いろんな事を考えさせてくれそうで楽しみ楽しみ。次巻も買うと思います。面白かったです。