『ネクタイを締めた百姓一揆』~新幹線を通した昭和地域史の一視点として
どうも、すっかりブログの書き方を忘れてしまったくるぶしさんです。コロナウイルスがどうのこうのという今日この頃いかがお過ごしでしょうか(いかがお過ごしでしょうかじゃねぇよ)。
最近はいろいろなイベントが休止になる中、年2回の花巻での打ち合わせも順延となり、何かものさみしいとも思うのですが、そんななか盛岡で東北新幹線新花巻駅設立の経緯を描いた映画が上映されるという。
2010年の企画開始から7年を掛けて花巻市民有志により制作されたこの映画は、2017年に花巻地区での上映、2018年に映画祭出展……となっているが盛岡での上映は今年に入ってからとのこと。
上記の通り、僕自身花巻に縁も深く、知人が出演していると言うこともあり、気にはなっていたがなかなか機会に恵まれず……今年盛岡で上映と聞いて無事チケットを取ったのであった……3月の話である。
その映画が盛岡で明日より再上映されると言うことで、改めて個人的な思いも含めて感想を述べてみたい。
saturday player meetingがサントラを担当した新花巻駅設置を描いた映画「ネクタイを締めた百姓一揆」が5/29〜6/11に盛岡市菜園の盛岡ルミエールでアンコール上映されます。午前11時の回と午後4時20分の二回上映です。サタプレの楽曲と共にぜひ大画面お楽しみください! pic.twitter.com/s5mlNKlOm0
— hammofsky (@hammofsky) 2020年5月28日
(いやこのテーマソングのサックスがいいのですよ……すごい耳に残る)
なお、このブログの筆者は花巻市の隣である北上市の出身と言うこともあり、かなーーーり私的な見解も入っている部分もあるため、その点をあらかじめご留意されたし。
さて、物語は花巻財界の重役が東北新幹線の花巻非停車を知らされるところに端を発しているが、そもそも『新花巻駅』というのがどういう存在かを紐解く必要があろう。ここに2007年に北海道経済連合会(リンク)がまとめた資料が存在する。
北海道新幹線札幌延伸に伴う効果と地域の課題 調査報告書【要約版】
http://www.dokeiren.gr.jp/assets/files/pdf/teigen/2006_08sinkansen-youyaku.pdf
で、その中に『北上駅』『新花巻駅』設置の経緯がそれぞれ調べられており、その内容がこちら。
新花巻駅は「日本初の新幹線請願駅」、つまり100%地元の要望によって作られた駅なのであるが、盛岡と一関の中間駅をどこにするかという話になったときに、工場の誘致同様に北上側で新幹線駅の誘致運動があったらしい。北上盆地の地形から見ておそらくトンネルを掘るよりは……というのもあったんじゃなかろうか。
では花巻は?……北上生まれ北上育ちの父曰く、それなりの反対運動があった模様。当時は新幹線の騒音問題とかもあり、市街地を走ることは歓迎されなかったらしい(父の証言によるものなので、異論があったら言及していただけると有り難い)。この辺は映画では『誘致をしなかった』という形で表現されている。
が、『花巻落選』の報が入ったことで状況は一変する。花巻と北上のライバル意識はそりゃぁもう根深い。これまた私見で申し訳ないが、『花巻本店・北上支店』の商店があの地域には当時そこそこあったため、「なぜ北上がOKで花巻が素通りなのか」という意識があっただろう。事実、映画の中で主人公格として存在する誘致チームのうち、『マルカン』も『誠山房』(劇中カタカナ)も北上に支店があったのですよ……特に『誠山房』は北上最大のショッピングモールの中にあってね……閑話休題。
とまぁ話を映画に戻すと、この映画は新幹線素通りから端を発した市民運動による新駅設置までの足かけ14年を描いた、都市計画そのものを描いた群像劇なのである。物語は概ね事実に基づいているため、『事実を素にした再現ドラマ』……という表現が正しいかもしれない。
近現代史という観点で行くと、新花巻駅の設置要請という流れと同時進行で進んでいく国鉄労組問題と民営化に至る流れというのをしっかり描いた作品を僕はあまり知らない(不勉強で申し訳ないが)。国鉄の労働運動が市民感覚と乖離していった……と言う話はWikipediaによく書かれているものの、ここまでがっつりと描写されるということに非常に感心していた(この辺はおそらく公式サイトの『時代背景(リンク』が詳しい)。
そして物語は新花巻駅の完成を持って幕を閉じるが、上記『マルカン』『誠山房』のその後を知っているだけに、単純なハッピーエンドではないというのも認識してしまっている。新花巻駅の完成は、作中で市街地住民達が薄々感づいていたとおり、花巻市の都市構造そのものの大変革をもたらした。『誠山房』は既に無く、『マルカン』も郊外型店舗に移行し中心地の『マルカンビル』はネーミングこそ残すものの経営の手を離れたことは周知の通り。
映画に話を戻そう。上映時間は2時間半、登場人物も当時の花巻市政・花巻財界中心者から国政・国鉄、それから市井の人々まで膨大であり、正直なところ近現代史の知識がある程度ないと難しいんじゃないか……という懸念は今もある。ただ、それを上回るほどの制作者の熱量がこの映画を成り立たせていると感じているのだ。
この作品自体が花巻市民を中心に草の根で制作されており、『市民運動を描く映画を作る市民運動』という二重構造になっているのも感心させる。映画公式サイトのトップページからして『おっさん』『おっさん』『更におっさん』とアブラギッシュな(失礼)画面になっており、決して華はない。それでも2時間半という長丁場の映画を決してダレさせることなく鑑賞しうるのは、この映画を作り上げた熱量が、登場人物の新幹線新駅を作る熱量を通じて伝わってきたからだろうか。
味わいのあるキャラクターの多さもこの作品の魅力の一つで、自分はふんどし一丁で沼に飛び込むショウゾウさんが好み。マンノスケが市長になるにあたり、それを期待するようなセリフを掛けるんだけども、その一言がお互いの信頼関係を現わしていてなんかいいよね……となるのだ。
で、これは僕自身の楽しみ方なんだけれども、市民映画であるだけにちょっとした『重箱の隅つつき』的なところもポイントの一つ……と感じている。市民映画であるがゆえに用意できる小道具の限界であることは重々承知の上で、昭和後期の時代背景に紛れ込んでいる『平成』を見つけるのが非常に楽しかった(制作者にとって不本意であれば大変申し訳ないが)。例えばデモのシーンで映る「白金豚」の看板、一坪献上運動の垂れ幕の横に映る「アクサダイレクト」のロゴマークetcetc... いくらでも予算を掛ければCGで出来たかもしれないが、そこはもちろん本質じゃないし、それさえも大きなうねりの中に紛れ込んだ一つの光のような気がして非常に楽しませていただいた。
そんなこんなで、この映画を楽しむためには是非公式サイトを一通り読んでから観ることをおすすめしたい(あるいは売店で力作のパンフレットを購入されるのも良い。フルカラー40ページですよ)なぜならこの映画は非常にハイコンテクストな部分があり、ある程度の知識をもって鑑賞した方がより一層理解が深まると思われるのである。関西での地域映画祭出展実績が示すとおり、もちろん全くの知識を入れずとも十分楽しめる映画であることは間違いないのであるが、ただ僕の文章をここまで読んで鑑賞に行くひとは多分そういう知識を欲する方だと思うので、せっかくなので濃密な147分を更に濃密な体験にするためにも、事前の知識を入れておくことを僕としては推奨するものである。……本音言うとこの映画上映しながら横でずーっとコメンタリーっぽく喋ってたいってのはあるんだけどね! どうですか応援上映!(応援??)
最後になったが、岩手発の実録映画として、これを機に引き続きのロングラン上映となれば幸いだ。
ちなみに、冒頭の父は実際の新花巻駅建築に関わっており、既に走っている新幹線のレールの上に駅を小屋掛けする形になったので、建設中は新幹線が通過するたびにサッと避けて対応していた……と言うことをこの映画を見たことを話したら教えてくれたのでウエブの海に放流することにしてこの記事の締めとする。
新時代開けそびれました
新元号だよ月曜日。今年のエイプリルフール、昨年までは知人のサイトのデザインをお借りしたり、ニセ企画ページを一枚立ち上げたり、はたまた「四暗刻字一色洲崎西」とかやってみたりね。
今回はサイト開設20周年ということで、初心に返って開設当時のサイトを再現してみました。20年前だぞ古いな。新年度の月曜日の新元号発表日だというのに凝ったゲームばっかり作られる今日この頃ではございますが、こんな軽いページも中にはあってもいいんじゃないでしょうか。そんな多忙な日の1発目から重いゲームやってられんだろ??
ちなみに今回のサイトデザイン復刻にあたりWaybackMachineを駆使しましたが最初の2年分ぐらいアーカイブされてないんですよ……がっくり。なので記憶を掘り起こしながら(当時のサイトのデザインを)再現したり何かしたり。しかし、開始当時に置いていた米ジオシティーズも、それの日本版もこのたび閉鎖となり、時代の変遷を感じています(このサイトも実質4~5度ほどURLを変更していたりします)。21年目もどうぞよしなに。
第三回文学フリマ岩手
参加します。よしなに。
第三回文学フリマ岩手に、【Quantum EDiter】(ブース: イ-02) として出店します! https://t.co/XxCJHZwWtX #文学フリマ @BunfreeIwateさんから
— くるぶし祐吾@文フリ岩手イ02 (@ykurubushi) 2018年6月16日
2016年もありがとうございました
それでは、良いお年を。
隠遁希望
とまぁ、ゴールデンウイークも終わった途端、突然の胃痛。多分五月病。どんだけはたらきたくないねん……。
さて。告知的なあれですが今更のように。
【あ、一応念のため簡潔告知です】くるぶしさんは次回文フリ参加しま「せん」。夏コミも休みます。すみませんが、今のところ無期限休業予定です。よろしくお願いします。
— くるぶしゆーご (@ykurubushi) 2014, 2月 17
……って、深い理由があるわけじゃないんですが。
ちらちら見えるイベント参加の件。本を出すとか作るのに疲れてしまったのか、文フリも夏コミも参加しないと決めてからむしろ精神的に若干軽くなったような気がしていて、ああ、何と無く強迫観念があったのかなとか感じたり。
— くるぶしゆーご (@ykurubushi) 2014, 5月 1
活字も漫画も正直きつくなってるのも事実。なんでだろう……
— くるぶしゆーご (@ykurubushi) 2014, 5月 1
@sleepdog イベント疲れは確実にありますね……
— くるぶしゆーご (@ykurubushi) 2014, 5月 1
@sleepdog 一応明示しといた方がいいのかなぁとか思いまして(いつもいるんじゃないかと思われてそうですし)。ちょっと精神的にほぐれるには時間がかかりそうです。
— くるぶしゆーご (@ykurubushi) 2014, 5月 1
別に思うところがあるとかないとか語るのも面倒なので、気が向かない限りほったらかしにしようと思います。小説はおろか、漫画も手が伸びにくくなってる、ってのが理由として小さくないんですがね……なんとも。