岡崎隼人「少女は踊る暗い腹の中踊る」(講談社ノベルス)
少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス) 岡崎 隼人 講談社 2006-06-07 by G-Tools |
そういえばこのカテゴリも久しぶりだなぁ。某所の読書会みたいなもののために読んだ作品(ぼかしすぎて訳が分からなくなっています)。
連続乳児誘拐事件に震撼する岡山市内で、コインランドリー管理の仕事をしながら、無為な日々を消化する北原結平・19歳。自らが犯した過去の“罪”に囚われ続け、後悔に塗れていた。だが、深夜のコンビニで出会ったセーラー服の少女・蒼以によって、孤独な日常が一変する。正体不明のシリアルキラー“ウサガワ”の出現。過去の出来事のフラッシュバック。暴走する感情。溢れ出す抑圧。一連の事件の奥に潜む更なる闇。結平も蒼以もあなたも、もう後戻りはできない!!第34回メフィスト賞受賞!子供たちのダークサイドを抉る青春ノワールの進化型デビュー。
何となく「オタクっぽくない佐藤友哉」という言葉が浮かびました。この前提が正しいかどうかは分かりませんが、閉じた世界のみで展開される話であることは確かです。「父親のコインランドリーを……」という主人公には両親の話がほとんど出てきませんし、襲われた赤ちゃんの中には「次女」がいるにもかかわらず、その姉の姿がほとんど出てこなかったり。もしかしたら、「セカイ系」の一種に類することが出来る話ではあるかも知れません。僕にはこういう話は書けないなぁ。凄惨すぎて、勝手に救いを求めて。良いのかそれで、という気はしなくもないです。考え過ぎかな。
僕の感想としては、「すごいけど認めたくない」というのが正直なところ。作者はもしかしたら「現実は現実、小説は小説」と割り切っているのかも知れない。そんな感じがするんですよね。何か生々しく書かれているのに、要するにDQNが多すぎて現実味がない、という感覚なのです。だから、読んでいて作中世界にどっぷりと填りつつも、主人公の目線を極めて冷めた視点で見てしまうのです。要は感情移入出来ない、ということでしょうか。何となく読者を選ぶ作品だなぁ、とは思います。シリーズ化しにくい展開でもありますし(そのうち○○サーガとか言い始めたらびっくりですが)。決して面白くなかったわけではないのですが、腑に落ちない感覚を得ました。うーん、殺人がサラダ油みたいな、というか(どんな例えだ)。
まー、そのうち太田克史からお呼びがかかりそうな作家だとは思います。年代的にも最年少だし。